この疑問に回答する記事になります。
結論から回答すると年収が上がったことにはなりません。「フリーランスの収入」が「会社が支払う人件費としてのコスト」を上回れば年収が上がったことになります。そちらは、以下で詳しく解説して行きます。
本記事のフリーランスとして仕事をやられている方を対象にしています。
フリーランスのに対するキャリア相談を1000人以上実施してきた私の相談経験から解説して行きます。
フリーランスの収入と支出
フリーランスの収入は、正社員の時の年収を簡単に超えてしまうことが多いのです。
収入に注目すると確かにその通りなのですが、正社員の時には意識していなかった支出が、フリーランスになると自ら支払うことになるため、この支出の多さに驚きます。
フリーランスの収入だけでなく、支出についても、以下で解説して行きます。
フリーランスの収入
事業から得られる売上に相当します。
例えば、WEBのコンサルティングを事業としている場合、下記のように様々な仕事が存在します。
- WEBサイト企画立案
- WEBサイト分析・調査
- WEBサイト構築
- WEBサイト運用・保守
フリーランスは、それぞれの仕事を受注して、依頼内容に関してしっかり成果を上げることで対価を得ています。
この対価が事業から得られる売上、つまり収入になります。
フリーランスの支出①必要経費
事業を行うためには必要な費用です。
具体的には下記のようなものがあげられます。
- 光熱費
- 通信費
- 交通費
- オフィスの賃料
フリーランスは上記の費用をすべて自分で支払うため、正社員よりも割高になる傾向にあります。
例えば、オフィスの賃料は、都内の人気のエリアだと、結構高額になります。私はベンチャーの立ち上げ当初を経験していますが、初めは住宅マンションの共有スペースの事務所を使用していました。その後人が増えたため、オフィスビルに引っ越しましたが、経営者のその時の決断はかなりのものだったと思います。フリーランスになってその気持ちは痛いほどわかります。
フリーランスの支出②社会保険料
社会保険とは国民の生活を保証するために設けられた公的な保険制度の総称をあわらします。社会保険料はその保険制度を使用するための保険料です。加入が義務付けられています。
具体的には下記のようなものがあげられます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
健康保険と厚生年金保険は、正社員の時は会社が半分支払ってくれていました。フリーランスの場合は全額支払うことが必要です。
かなりざっくりとした計算になりますのであくまでも目安と考えて欲しいのですが、年齢が40歳未満で月給30万円の人の場合、正社員の時は約4万2,000円だったのが2倍の約8万4,000円を支払うことになります。
地味に大きいですね。。。
フリーランスの支出③税金
国民の三大義務の一つ「納税の義務」です。
税金の種類は下記です。ここでは法人ではなく個人を想定しています。
- 所得税
- 住民税
- 消費税
- 個人事業税(事業によって納税が必要)
消費税や個人事業税は正社員の時は納税の必要はなく、フリーランスになることで新たに支払われる税金になります。
一般的に正社員の時よりも多く税金を支払うことになります。
会社が支払う人件費としてのコスト
今まではフリーランスからの目線でしたが、ここからは正社員を雇用している会社から目線で解説して行きます。
会社は正社員を一人雇うのに人件費としてのコストを払い続けて行きます。そのコストは、年収の150%増しくらいと言われているます。
100%を超える50%の内訳ですが、20%部分は経費として、残りの30%は以下で解説するコストに当てはまります。
会社が支払う年収30%分の人件費としてのコスト
それぞれの内訳は以下です。
残業手当・休日出勤手当
残業や休日出勤に対しての手当も会社が支払うコストになります。
フリーランスは契約内容によりますが時間の制約がなく、考慮されていないケースも多いです。
有給休暇
休暇を取得しても給与を会社が支払います。
有給休暇は年次有給休暇制度として定められています。
最大20日有給休暇がある場合、週休2日制の会社であれば1ヶ月まるまる休めます。年収分の12ヶ月働いて、まるまる1ヶ月休むとなると、12ヶ月働いただけで13ヶ月分の給与をもらえます。会社としてはかなりのコストになります。
退職金積立金
正社員が退職時に受け取る退職金について、会社は将来の支給のために積み立てを行います。
例えば、35年勤め上げて2000万円の退職金が支払われるケースだと、単純計算で年で約60万円、月で約5万円の積立が必要になります。
納税の手続き
正社員の場合は、会社が納税を代行してくれます。会社としては、経理の専門スタッフなどを雇う人件費分のコストを支払うことになります。
収入を上げるために時間を優先的に使う必要があるフリーランスにとって納税の手続きを自ら行うことは非常に大きな負担です。正社員が良かったと痛感する瞬間かもしれません。
社会保険料の折半分
フリーランスの支出②社会保険料で説明した通り、社会保険料のうち健康保険と厚生年金保険は会社が半分支払っています。
福利厚生費
この福利厚生費は社会保険料以外の会社が任意に支払うものに限定しています。
福利厚生費のほんの一例ですが下記のようなものがあげられます。
- 住宅手当
- 健康診断
- 社食
- レジャー施設宿泊の提供
- 慶弔見舞金
会社としては会社の社会的信頼を高め、人材確保に役立てたり、社員のモチベーションやパフォーマンスの向上も期待できるために支払います。
福利厚生が充実している会社を離れてフリーランスとしてやるとその有り難さがわかるかもしれません。
フリーランスの収入の考え方
冒頭の疑問にもう一度回答すると「フリーランスの収入」が「会社が支払う人件費としてのコスト」を上回れば年収が上がったことになります。
もう少し具体的に言うと「会社が支払う人件費としてのコスト」が正社員の年収の150%くらいなので「フリーランスの収入」はそれを超えることで初めて年収が上がったと言えることになります。
以上を踏まえて「フリーランスの収入」をどのように考えれば良いか、さらに解説して行きます。
不安定さのリスクを組み込んだ単価設定をする
単価は、フリーランスの不安定さのリスクも含めた上で設定しましょう。
フリーランスは安定的に継続して仕事をやっていけるか分かりません。最悪のケースは、仕事がなくなることで収入はゼロになります。そのリスクを極力なくすための単価設定の方法をおすすめします。
具体的には以下のように考えます。
- 正社員の時の年収が400万円の人がフリーランス になる
- フリーランスの最低ラインの目標収入は150%増しのため年に600万円とする
- フリーランスの最低ラインの目標収入を年間12カ月ではなく10カ月で稼ぐように単価を設定する
- つまり月の単価は60万円とする
ここのポイントは③になります。10カ月で年収を稼ぐ設定にすれば、残りの2カ月間余裕ができます。
この期間は最悪仕事ができなくても、年収分は稼げるので問題ありません。2ヶ月間はしっかり営業活動に充てたり、次の仕事のための準備に充てることができます。時間的な余裕があるので、条件の良い仕事を探すための心の余裕が生まれます。また、仮に連続して稼働ができていたら12ヶ月分の収入を確保できます。
以上のやり方によって、フリーランスの仕事の不安定さからは、ある程度解放されます。
不安定さのリスクヘッジのため複数の仕事を受ける
仕事は1箇所からではなく、できる限り複数箇所から受けましょう。
フリーランスはクライアントの方針に影響を受けやすいので、予算が厳しくなったりすると仕事自体がなくなることはよくあります。そのため、仕事を1箇所のみから受けるのは非常にリスクが高いです。そのリスクを極力なくすために、3つくらいのクライアントと仕事をするのがおすすめです。
仕事の種類によっては複数から仕事を受けることが難しい場合もあります。月に60万円稼ぐフリーランスの仕事の稼ぎ方について2つ具体例を下記に示します。
- ケース①:1件サイト作成にて20万円の収入となる仕事をクライアント3社から受けた
- ケース②:クライアント先にフルタイム常駐してWEBサイトを構築することで60万円の収入となる仕事を受けた
ケース①について
上記でおすすめしたやり方になります。
ケース②について
こちらは、クライアント先にフルタイム常駐の仕事なので、仕事を複数掛け持ちすることはできません。
その場合は、仕事がなくなってしまうリスクを極力なくすために、他のクライアントとの連絡を密にしておいたり、仕事を紹介してくれるエージェントとの連絡を密にしておくなど、すぐにでも仕事がもらえるような準備をしておきましょう。クライアント先に常駐しているので、クライアントからプロジェクトの状況などの情報収集をこまめにして、出来るだけ先手を打って動けるようにしておくことも必要です。
単価自体を上げる
単価自体を上げる試みをして行きましょう。
単価を上げるためには、実績をもとにした自分の強みをクライアントなど仕事をもらう相手にアピールして交渉できるように準備が必要です。
そのためにやるべきこと下記です。
- やるべきこと①:自分の強みを改めて整理して現時点の自身のレベル感を把握
- やるべきこと②:現時点の自身のレベル感から、より付加価値を生み出せるポジショニングはどこか確認
やるべきこと①
フリーランスとして日々実績や成果をあげているので自分の強みをしっかり整理して行きましょう。
そうすることで、強みとしてアピールできるところと、まだまだのところがわかるので、現時点の自身のレベル感がわかります。
現時点の自身のレベル感を客観的に理解しましょう。
やるべきこと②
現時点の自身のレベル感がわかると自分がどこに向かえばより実績や成果を上げられるか、つまり付加価値を生み出せるポジションがわかってきます。
付加価値を生み出せるポジションに移動を試みつつ、自分のまだまだなところを強みに変えるための行動をして、試行錯誤を繰り返して自分の強みを増やして行く必要があります。
増えた自分の強みを、実績や成果とともに職務経歴書にしっかり表現することで、すぐに交渉材料に使えるように準備しておきましょう。
まとめ
フリーランスの収入は、考え方をしっかり理解すれば、不安定さというリスクをある程度はコントロールすることができます。
ただし、どんなにリスクをコントロールしようとしても、自分の力が及ばない外的要因でコントロールが効かなくなることもあります。
フリーランスとしてやっていくには、良い状態の時でも、常に最悪のシナリオを想定して、それに備えておくことは必須です。
その構えがあればフリーランスの収入は、正社員の時よりも増やす事は可能になります。
是非、あなたの収入の設定の参考にしてみてください。