フリーランスの社会保険は?【足らない分は自分で備える!】

疑問:フリーランスになったら社会保険は何をしておけば良いのでしょうか?

この疑問に回答する記事になります。

社会保険について、フリーランスになったら正社員の時と何が違ってくるのでしょうか。違いを理解して、いざというときに備えることができるように詳しく解説して行きます。

本記事の対象は、フリーランスという働き方をこれからして行きたいと考えている方をイメージしています。

フリーランスに対するキャリア相談を1000人以上実施してきて私の相談経験から解説して行きます。

フリーランスが対象となる社会保険

@@@フリーランスが対象となる社会保険について解説して行きます。日本の社会保険制度になっているのでしょうか。

日本の社会保険制度

日本の社会保険制度は以下の目的のため存在しています。

病気、ケガ、出産、失業などが原因で通常の生活が難しくなった場合に最低限の生活ができるように保証するための制度

具体的には次の5つの総称になります。

  1. 医療保険
  2. 年金保険
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険

5つの中でフリーランスはどれが対象となっているのでしょうか?

社会保険種類 概要 加入
フリーランス 正社員・パート社員など
医療保険 病気やケガになった人に対して保証する制度。 ○(義務)
年金保険 老後の生活や病気に対して保証する制度。 ○(義務)
介護保険 高齢者や介護が必要ないとに対して保証する制度 40歳以上で○(義務)
雇用保険 労働者の雇用の安定や促進のために作られた制度 ×(対象外)
※パート社員などは一部制約あり
労災保険 仕事中や勤務中に事故などにあった場合に対して保証する制度 ×(対象外)

医療保険は『国民健康保険』に原則加入する

医療保険には「健康保険」「国民健康保険」があります。

「健康保険」会社が用意する医療保険「国民健康保険」国が用意する医療保険になります。

両者の違いについてまとめて行きます。

健康保険 国民健康保険
加入者 正社員・パート社員など
※パート社員などは一部制約あり
フリーランスなど
扶養という考え方 あり なし
治療費の自己負担 原則3割負担(年齢別で負担が分かれ1割〜3割まで)
出産育児一時金 あり
傷病手当金 あり なし
出産手当金 あり なし
死亡時 あり あり

フリーランスの医療保険は、国が用意する「国民健康保険」に原則加入することになります。

フリーランスが対象になっていない箇所について詳細を説明して行きます。

扶養という考え方

扶養とは「生活の面倒をみること」です。

健康保険は扶養という考え方があり、保険料の対象となるのは扶養する人のみです。

一方、国民健康保険は、保険料の対象となるのは扶養する人だけでなく扶養の対象となる人全員対象となります。

家族がいてフリーランスになった場合に、保険料が非常に上がるため、びっくりすると思います。

傷病手当金とは

在職中に病気や怪我で働けない時に支給される手当金になります。

健康保険では、具体的には、連続して3日以上勤めを休んだときに、4日目から、1日につき標準報酬日額(※1)の3分の2が支給され、期間は1年半が限度になります。

ただし、会社の事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合は支給はされない点は注意です。

フリーランスは会社と雇用契約がないため、会社に在職しているという考え方をしません。

フリーランスが加入する国民健康保険では保証の対象となりません。

ちなみに、言葉が似たようなもので「傷病手当」というのが雇用保険にあります。

失業中に病気や怪我で就職・求職活動ができない時に支給されるものになります。

フリーランスは、会社に雇用されているという考え方をしないため国民健康保険は、対象としていません。

※1 標準報酬日額とは
健康保険加入者の保険料決定の基礎となる標準報酬月額の30分の1に相当する額のこと。

出産手当金とは

出産のため会社を休み、給与の支払いが受けられなかった場合に支給される手当金になります。

具体的には、出産のために会社を休み、会社の事業主から報酬が受けられないとき、産前42日から産後56日までの期間、欠勤1日付標準報酬日額の3分の2が支給されます。

出産予定日が遅れた場合は、遅れた日数分給付日が増えます。

フリーランスは会社と雇用契約がないため、会社に在職しているという考え方をしません。

フリーランスが加入する国民健康保険では保証の対象となりません。

医療保険は『健康保険の任意継続』も可能

フリーランスの医療保険は、国が用意する「国民健康保険」に原則加入です。

ただし、会社員からフリーランスになる場合、会社員時代に加入していた健康保険を継続することが可能です。

この『健康保険の任意継続』についてメリットとデメリットを説明して行きます。

『健康保険の任意継続』のメリット

  • 健康保険の保証内容がそのまま
    会社員の時に受けていた保証がそのまま継続します。
  • 保険料は加入者一人分
    扶養という考え方があるので扶養家族の収入によっては保険料は一人分で済みます。
  • 保険料が安くなる場合ある
    退職時の給与が27万円以上で、それ以上の収入をフリーランスとして上げることができれば保険料は安くなります。
    給与が27万円以上だと保険料が上限額で一定だからです。

『健康保険の任意継続』のデメリット

  • 期間が限られる
    任意継続期間は2年が最長になります。
  • 資格喪失処分が厳しい
    保険料を一度でも滞納したらダメです。
  • 保険料が高くなる場合あり
    健康保険の任意継続の場合、任意継続の2年間の保険料が同じです。
    そのため、退職後のフリーランスの収入が低い場合に、その収入が反映されないため高い保険料を払う可能性があります。

『健康保険の任意継続』を選択する判断基準

扶養家族がいる場合でフリーランスでの収入がある程度見込める場合は『健康保険の任意継続』の検討はありです。

特に退職時の給与額とフリーランスでの収入額によってメリット・デメリットが変わってきます。

フリーランスでの収入の見込みを立てるのは難しいですが事前のシミュレーションを行って判断して行きましょう。

『介護保険』は医療保険と一緒に徴収

医療保険と一緒に徴収されます。

40歳位以上の人は会社員などやフリーランスに関係なく徴収されます。

『年金保険』は国民年金のみに

年金保険は2階建構造になっていると言われます。

1階部分 国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満の人
2階部分 厚生年金 厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する人

国民年金はフリーランスや会社員など関係なく加入が必要になります。

厚生年金とは

厚生年金は会社が用意するもので正社員などが対象になります。

フリーランスは会社と雇用契約がないため、会社に在職しているという考え方をしません。

フリーランスは加入すべき対象がそもそもありません。

大体の金額感は国民年金と比較した表にまとめてます。

データは2018年度の金額をもとにしていますので、かなりざっくりしたものとなってます。

厚生年金(会社員など) 国民年金(フリーランス)
保険料 1万6000円くらいから11万円くらいの幅
※1.収入によって計算
※2.実際の支払い額は半額
1万6000円くらい
年金支給額(老齢年金) 15万6000円くらい
※3.平均的な年収(44万円くらい)の会社員の場合
6万4000円くらい

国民年金の保険料が定額です。

一方、厚生年金の保険料は収入に合わせて支払額が変わります。また、国民年金の保険料は厚生年金の保険料に含まれますので別で支払う必要はりません。さらに、厚生年金の保険料の半分は会社が負担してくれます。

将来の年金支給額に関しては、あくまでも目安ですが、厚生年金に加入している会社員の方がフリーランスよりも9万円ちょっと多くもらえることになります。

制度として会社員の将来の備えを強制的にしてくれる厚生年金がないフリーランスは自らが将来に備える準備をする必要があります。

雇用保険・労災保険は対象外

フリーランスは会社と雇用契約がないので両方とも対象外になります。

ただし、労災保険に関しては特別加入という制度のもと、加入が可能になります。

具体的には個人タクシーなど自動車を利用している運送業や大工などの土建業・建築業・解体業などの仕事に従事している方々が対象になります。

会社員などは働けなくなった場合に保証されるような制度があり、万が一の場合に備えています。

一方、フリーランスは働けなくなった場合には何も保証はされないので自らが保証にあたる準備をして、万が一の場合に備える必要があります。

フリーランスになった時の実際の手続き

切り替える上での手続きは、住まいの近くの市区町村に出向く必要がありますが、そこまで面倒なことはありません。

手続き上の注意事項です。

期限 必要な書類
医療保険 国民健康保険 退職日から14日以内 ・健康保険の資格の喪失日がわかる書類
(健康保険資格喪失証明書・離職票・退職証明書など)
・本人確認書類
・マイナンバーが確認できる書類(加入する人全員)
・印鑑
健康保険の任意継続 退職日から20日以内 ・健康保険任意継続被保険者資格取得申込書
・収入を証明できる書類(所得証明書や非課税証明書など)
・退職日を確認できる書類(任意)
国民年金 退職日から14日以内 ・退職日を確認できる書類
(健康保険資格喪失証明書・離職票・退職証明書など)
・本人確認書
・年金手帳

健康保険の任意継続は期限にある20日を超えてしまった場合加入はできません。

一方、国民健康保険や国民年金は期限を超えた場合でも手続きは可能です。

その場合の保険料は退職した日から計算されます。

どちらにしても早めに手続きを済ませた方が良いです。

フリーランスの社会保険で足らない部分は

以上よりフリーランスとしてやっていくためには下記の2つを注意しなければなりません。

  • 働けなくなってしまった時にすぐに必要な保証
  • 将来的に働けなくなってしまった時に必要な保証

それぞれ、どう対処すれば良いかも含め、解説して行きます。

働けなくなてしまった時にすぐに必要な保証

フリーランスのリスクは働けなくなった場合に収入がすぐにゼロになってしまうことです。

そのために、健康的にケガなくやっていこうと言うのは大前提です。

ただし、気をつけていても病気や怪我にいつなってしまうかは、わかりません。

フリーランスは上記であげた通り、病気や怪我で働けなくなった時の制度としての保証はほとんどありません。

自分で制度に変わるものを構築して、備える必要があります

代替の保険で備える

「所得補償保険」が各損害保険会社から用意があります。

こちらは、契約前12ヶ月の所得の50%から70%を上限として保証してくれます。

保険期間は1年間 or 5年間が一般的で所定の年齢まで自動更新されます。

「就業不能保険」が各生命保険会社から用意があります。

こちらは、契約前の年収に応じた上限額として保証してくれます。

50歳から70歳前後のうち5年刻みで保険期間を設定します。

フリーランスの保証としては直ぐの保証を想定している所得保証保険の方を検討すべきでしょう。

すぐに現金化できる資産で備える

すぐに現金化できる資産を持っておくことが大事になります。

現金化できる資産の順といえば下記でしょうか。

  1. 現金
  2. 普通預金
  3. 定期預金
  4. 株式
  5. 投資信託

ここにあげたものでもオンラインサービスを利用する事で現金化がしやすくなります。

働けない状況になってしまった場合を想定してすぐに現金化ができる資産を作り、万が一の時の保証ができる仕組みとして検討してみましょう。

将来的に働けなくなってしまった時に必要な保証

フリーランスは上記であげた通り、将来への年金での保証が正社員などに比べると乏しいです。

乏しい状況に備えるために自分で制度を構築する必要があります。

代替の年金で備える

例えば厚生年金の足らない分をiDeCoや日本年金基金で補うと言うやり方はありだと思います。

2つを比較しつつ説明して行きます。

iDeCo 国民年金基金
掛金 上限 月額6万8000円
制約 掛金の減額や一時中断は可能
最小掛金または1口目の金額を減らすことは不可。
方法 最小掛金:5000円
1000円単位
ボーナス払いなども可能
最小掛金:1口
年齢、性別で金額が異なる
2口目以降も金額が異なる
受取 開始 原則60歳
加入期間10年未満の場合は加入期間に応じて61歳から65歳まで引き上がる
原則65歳
ただし、60歳からの受給も可能なプランあり
期間 勇気年金として5年以上20年以下の期間
受給権発生の年齢から70歳になるまでに一括受給も可能
終身年金
60歳から年金の一部を5年、10年、15年として受給することも可能

掛金の観点から融通が効く点でiDeCo受取の観点から終身年金という点で国民年金基金オススメになります。

節税という観点と資産運用という観点からはどちらもあまり変わり無いので、自身のライフプランによってどちらを選択する検討をして行きましょう。

ちなみに、2つを併用するなんてやり方もありです。

最後に

フリーランスの社会保険について解説して来ました。

フリーランスは新しい働き方に近いので、本記事で解説した通り、まだまだ保証が制度的に追いついていないことも確かです。

その中で自身のライフプランからどのような働き方をしてどのような老後を過ごすかをしっかり見据えてそれに備えていけるノウハウを身につけることもメリットの一つだと思います。

是非、本記事を参考にして万が一に備えつつ、フリーランスライフをより良いものにしてください。

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