こんな疑問をお持ちの方に向けての記事になります。
プロボノという言葉は、キャリアについての記事などで最近良く聞く言葉になると思います。
ただ、プロボノという言葉の意味を知っていけば行くほど、ボランティアとの違いが分からないという方も多くいらっしゃるようです。
私も、プロボノとボランティアを両方を経験することで、より理解できた部分がありますので、今回は両方の違いについて解説していきます。
フリーランスをはじめとした方々に対してキャリア相談を1000人以上実施した私の経験も含め、キャリアという軸からプロボノを解説して行きます。
プロボノとボランティアの共通点
ボランティアとプロボノの違いを理解するためには、両者の共通点の理解が必要になります。
両者はどんな共通点ががあるのでしょうか?
それぞれの意味から、2つの共通点を解説していきます。
それぞれの意味
プロボノ
プロボノの語源は、ラテン語の『「Pro Bono Publico」=公共善のため』という言葉に由来します。
辞書でプロボノを調べると以下と出てきます。
職務上の専門知識・技術を活かして行う社会奉仕活動のこと。
引用:goo辞書(プロボノ)
つまり、通常の仕事内容で行う、営利を目的としない、社会的・公共的課題解決のための活動と言えます。
詳しいプロボノとはについてはこちらを参考ください。
ボランティア
厚生労働省からの資料である「ボランティアについて」からは行かように定義されています。
明確な定義を行うことは難しいが、一般的には「自発的な意志に基づき他人や 社会に貢献する行為」を指してボランティア活動と言われており、活動の性格として、「自主性(主体性)」、 「社会性(連帯性)」、「無償性(無給性)」等があげられる。
つまり、自らの意志に基づき実施する、営利を目的としない、社会貢献活動と言えます。
それぞれの共通点
『ボランティアについて』で述べられている活動の性格にあげられてる「自主性(主体性)」、 「社会性(連帯性)」、「無償性(無給性)」という3つについては共通していると言えます。
それぞれの参加者は、仕事以外の時間を利用して自らが参加する意志を持っていることは明確であり、「自主性(主体性)」を持っていることは間違いありません。
また、それぞれの参加者は、社会的・公共的課題解決や社会貢献活動をするということを目的にしているため、「社会性(連帯性)」を持っていることも間違いありません。
さらに、それぞれの参加者は、対価を活動の対価は求めないという姿勢であるため、「無償性(無給性)」を持っていることも間違いありません。
以上、3つの共通点が存在する上で、ボランティアが非常に裾野を広いという点を考慮すると、それぞれについての関係性は、プロボノはボランティアの一部分であるということが言えます。
プロボノとボランティアの違い
プロボノがボランティアの共通点は理解出来たと思います。
ただ、ボランティアが非常に裾野が広いという点からすると、当然ですが、両者は全くのイコール関係ではありません。
では、どんな違いがあるのでしょうか?れぞれの違いからの特徴を解説していきます。
それぞれの違い
ボランティアの裾野の広さはその活動内容から分かります。
ボランティアは社会貢献全般の活動になりますが、プロボノは、公共的・社会的課題に対する活動であり少し限定されています。
つまり、活動に用いられる手段がボランティアよりもプロボノの方が限定されているという事になります。
プロボノが仕事の延長にあるような専門的なスキルを求められるのに対して、ボランティアは仕事上のスキルだけでなく様々な形での参加が可能になります。
具体的に、プロボノという言葉が一番最初に出来たの時の対象となっていた職業である弁護士を例に考えてみましょう。
プロボノは、弁護士がNPO等で発生する契約周りの法律関係の業務に対して、無償で対応をします。
契約周りの法律関係の業務が、NPO等では、専門のスタッフが居ないため、困っているという課題に対して、弁護士資格を持った方が、代わりに役務提供という手段を使って、無償で解決している事になります。
一方、ボランティアは、弁護士が災害ボランティアの瓦礫の運搬や農業、林業の支援活動に対して、無償で参加をします。
社会貢献活動の一環として、弁護士の専門領域である業務以外の事を、無償で参加する事になります。
プロボノに関しては、対応出来る人が限られますが、ボランティアであれば、多くの方が参加出来ることになります。
プロボノはボランティアの一部分ではあるが、自分の専門知識・技術を活かすという点で、プロボノはボランティアの特殊な一形態と言えます。
ボランティアの分類によるプロボノの理解
ボランティアには裾野が広く、様々な形態が存在しています。
その形態を分類して、ボランティアの中で、プロボノがどのような位置づけにあるのか明確にしていきます。
まず、ボランティア活動について、「参加可能な対象となる人数」と「参加者個人が及ぼす影響」という2つの視点から、分類していきます。
「参加者個人が及ぼす影響」という点からすると、完全に個人的か、または組織のどの役割を支援するかで、その効果は大きく変わってくることになります。
その点を考慮した上で、4つに分類していきます。
- 単純作業によるボランティア
- 一般的なスキルによるボランティア
- 専門的なスキルによるボランティア
- 組織運営に関わるボランティア
大きな特徴として、④→①になるにつれて、「参加可能な対象となる人数」が多くなります。その一方で、①→④になるにつれて、「参加者個人が及ぼす影響」が高くなっていきます。
④→①の順で詳細を解説していきます。
④組織運営に関わるボランティア
④は組織運営に直接関わるボランティアになりますので、「参加者個人が及ぼす影響」は非常に大きなものになります。
具体的には、通常のボランティアではNPOが取りまとめる事がほとんどなので、NPO組織の理事のような仕事が④に該当します。
理事として、組織的に他の多くの人を動かすことが出来るため、「参加者個人が及ぼす影響」が非常に大きなものになります。
「参加可能な対象となる人数」という点では、それに見合う理念やスキルを持ち、組織運営をボランティアで実施できる人は、非常に限られるため、かなり少ないと言えます。
③専門的なスキルによるボランティア
③は専門的なスキルを必要とするボランティアであり、プロジェクトのような形で組織単位での動きが多くなるので、「参加者個人が及ぼす影響」は大きいものになります。
③が、プロボノに該当することになります。
具体的には、業務改善やWebサイトの新規構築、団体のロゴの作り直しなどの課題に対して、ある期間でプロジェクトとして、外部からの専門家として参画するような仕事が③に該当します。
「参加可能な対象となる人数」という点では、仕事の延長線上の専門スキルをもっている事が大前提になるため、社会人経験を持ち、何かのプロジェクト経験が必要になるため、少ないと言えます。
②一般的なスキルによるボランティア
②は、一般的なスキルが求められるボランティアであり、企業としての参加もありますが、個人や数人単位での参加が多いため、「参加者個人が及ぼす影響」は少ないと言えます。
具体的には、学校教育などの現場に出向いて、企業の業務に関連する知識などを伝える活動などが②に該当します。
企業単位で取り組むことでもあるので、「参加可能な対象となる人数」という点では、仕事の延長線上ではありますが、③のように課題を直接解決するわけではなく、交流などを通じて認知を高めていくような関わりになりますので、多いと言えます。
①単純作業によるボランティア
①は、誰にでも出来る単純作業になるため、「参加者個人が及ぼす影響」は非常に少ないと言えます。
具体的には、災害支援での大量にある瓦礫や土砂の運搬や、荷物の搬入や整理など様々な活動が①に該当します。
災害に合われて方々では、どうすることも出来ないので、外部からのボランティアが必要になり、テレビでも多く取り上げられています。
非常に重要で、かつ、貴重なため、一人でも多く参加してもらいたいボランティアになります。
そのため、活動内容も可能な限り単純化させることで、多くの参加者の門戸を広げています。
「参加者個人が及ぼす影響」は確かに非常に少ないですが、多くの方が参加することで社会に及ぼす影響は大きいことは間違いありません。
「参加可能な対象となる人数」という点では、誰でも参加できるようにしているため、非常に多いと言えます。
私が考えるプロボノとボランティアの違い
私が実際に参加したプロボノとボランティアの体験からそれぞれの違いについて解説していきます。
私が参加したプロボノ
私が参加したプロボノは、地域活性化プロジェクトの一つになります。
具体的なプロジェクト内容
具体的には、ある県の商業施設で行われているイベント担当者の退任に伴う、引き継ぎのためのマニュアル作成のプロジェクトです。
私は、プロジェクトチームのマーケッターという役割で参加しました。
マーケッターとは、NPOの事務局メンバー、理事、ボランティアスタッフ、会員、サービス利用者、支援者、関連分野の専門家等に幅広くヒアリングを行い、各主体のニーズを把握・分析する役割です。
マーケッターという仕事は、初めての体験でしたが、日頃実施しているキャリア相談でも使っているヒアリングに関するスキルを使うことで、イベント担当者を初めとする様々な方々に対して、情報収集を実施しました。
得た情報を元に、集約・分析して実際のマニュアルを作成することを実施しました。
チームメンバーもマーケティング領域が専門ではなかったですが、一人一人の仕事で養われたスキルを使い、プロジェクトの推進に、チーム一丸となって注力していきました。
プロボノに参加しての感想
数々のプロジェクトへプロフェッショナルとなる人材を紹介する仕事の経験もあり、プロジェクトの立ち回り方などの情報は人よりも多く持っていたと思っています。
ただ、実際に、自分がプレイヤーとしてプロジェクトに参加した経験は、ほぼ初めてに近かったので、実際やってみて、いろいろな体験をすることが出来ました。
その体験をしたいというのもプロボノへの参加の目的の一つだったので、非常に有意義の学びの場となりました。
私が参加したボランティア
私が参加したボランティアは主に2つがあります。
それぞれについて詳細をお伝えしていきます。
農業ボランティア
ある県で有機栽培をされている農家さんへの支援になります。
農薬や除草剤等を全く使用していない有機栽培なので、雑草が多く生えることになります。
そうなると虫も寄ってきやすくなるため、草刈りが必須となっています。
ただ、その農家さんはかなりの高齢化が進んでいるため、知り合いに助けを求め、支援が始まったようです。
具体的な作業は、草刈りがメインですが、冬になると肥料の運び込み等、結構な重労働をします。
ブルーベリーを多く作っている農家さんだったので、収穫時期は、たわわに実った実を収穫するお手伝いも実施しました。
全て楽しく出来ますが、やはり収穫時期を経験できると、今までの支援が、まさに実を結んだと思える瞬間で、非常に充実感があったのを覚えています。
復興支援のボランティア
地震や台風で被災された家への支援になります。
実際に支援のために訪れた都道府県は、宮城県、京都府、広島県、岡山県、大阪府、熊本県になります。
作業内容としては、ほとんどが肉体労働になります。
被災直後の時期は、逆にご迷惑をかけかねないため、ある程度時間が経ってからの支援が多いのですが、広島県や岡山県は台風の被災があった後で、まだ、土砂が多かった時は、ネコと呼ばれる一輪車で、大量の土砂を運ぶ作業をお手伝いしました。
ずっと関われれば良いのですが、その時は正社員のお休みを利用しての支援だったため、限られた時間のみとなっていました。
多くのボランティアがいるとは言え、土砂を運びさなければならない家は多く存在していたため、一軒一軒、順番にコツコツとやる必要がある仕事でした。
やらなければならない事に対して、自分が個人的に出来ることはごく僅かなため、役に立てているのかという疑問も湧きますが、定期的に来れる時に来ようという使命感が生まれたことを覚えています。
それぞれの違い(私の考え)
ボランティアとプロボノを経験してみて、「参加可能な対象となる人数」と「参加者個人が及ぼす影響」という2つの視点からの違いはやはり実感値として持てました。
ボランティアから見たプロボノとの違い
私は初めボランティアからはじめましたが、①該当するボランティア活動がほとんどでした。
参加者は様々な方がいらっしゃり、多くは地元の方でしたが遠方からの参加の方もいらっしゃいました。
「参加可能な対象となる人数」では非常に多いというのは実感できています。
普段デスクワークがほとんどの自分に取って、たまの一日の肉体労働によって、人の役に立てているという気持ちになることが出来ることが非常に必要な時間だったと思っています。
その一方で、活動内容に関しては、誰でも出来るように単純作業となるように、作り込まれていたのを実感しました。
例えば、作業が、夏の炎天下の中での実施になるため、熱中症対策のために、作業時間が15分を最大として、休みと水分補給と強制的にこまめに取るようなルールが決められていました。
ボランティア活動に慣れている人に取っては、かなり物足りなく感じてしまいますが、そこでの活動のルールの中でやるしかないという思いで皆さんやられていたように思います。
仕方ないことですが、ちょっと歯がゆい思いもしたのも事実です。
再三お伝えしますが、①の活動は非常に重要でありますが、自分も体験してみて「参加者個人が及ぼす影響」という意味ではやはり少ないのかなと言う印象は私も実感値として持っています。
プロボノから見たボランティアとの違い
そのちょっと歯がゆい思いを持った上で、プロボノと出会ったので、参加してみることにしました。
参加者は様々でしたが、それぞれの仕事で専門性を持った人ばかりでした。
人事、広報、システム、経営企画などが主な皆さんのバックグランドになります。
「参加可能な対象となる人数」は、私でも出来るのかなという思いで参加してみましたが、バックグランドは皆さん専門性を持たれているので、一般的からするとやはり少なくなるのかなという印象です。
でも、プロボノの精神は、手を上げた人がやりたいことをやるというものなので、あまり現時点の専門性にとらわれず、興味があったら参加するくらいハードルの低さで考えてみても良いと思います。
①の活動に対するちょっと歯がゆい思いで初めたプロボノだったので、「参加者個人が及ぼす影響」は大きいのかなという印象は持っています。
地域活性化のプロジェクトとして普段活気のない商業施設がイベント時になると2000人を超える県内外からの来場者が来るイベントを次に繋ぐことに携われることは、①とはまた違うやりがいを感じることが出来ました。
ただ、プロボノでも、自分たちの活動が本当に皆さんのお役に立てているかどうかの自問自答はいつもしており、迷いながら進めていくような形だったことは実感しました。
まとめ
今回はプロボノとボランティアの違いについて解説していきました。
プロボノがボランティアに含まれる関係性にあり、ボランティア活動が幅広く存在していることが理解いしていただいたかと思います。
ただ、ボランティアに関して、門戸を広げていますが、まだまだ参加する方のハードルが高いなと言うのが参加しての印象です。
ボランティアはいろいろな形態があるので、自分が無理せず参加できるものを探して、まずは参加してみてください。
キャリアを考える上で、自分の仕事のスキルの延長線上にあるプロボノに参加してみることはおすすめしている立場を取っています。
ただ、プロボノに限らず、行動することで、いろいろな発見ができると思いますので、プロボノが初め厳しかったら、自分でできそうなボランティアにされるのも良いと思います。
この記事を参考にして、参加してみてください。